社会人一年生の岡野穂摘は、この梅雨、すっかり滅入っていた。学校の勉強ができても、社会で通用するのとは、また全然違うのだと痛感し、しかも初めての一人暮らしで、家に帰って話せる相手もおらず、軽いウツに入っていた
タブレットを取り出す七枝

七枝は、そのカバンからタブレットを取り出す。そして、遮光カーテンのサイトを開いた。そのサイトには、金色の麦の穂が風になびいている柄のカーテンがあった。
「あ!これや!」
穂摘は、その柄を食い入るように見つめる。
「すごいなー、ななちゃん、さすがに、すぐわかるんやなー」
七枝は、にっこり笑う。
「いや、なによりも、その祥子さんって人が、穂摘ちゃんのメールだと百獣の王みたいな人かなと、思って」
「そりゃそうよ、朝田先輩をモノにしちゃうんだから、たいしたハンターよ」
「でもね、その名刺の話を聞いて・・・」
七枝の話に耳を傾ける穂摘。
「まぁ、カバンの色とイメージで、金色のライオンのたて髪か、風になびく麦の穂が浮かんだんだけど、その名刺の話を聞いて、きっと麦の穂だろうな、と思ったの」
「動物じゃなくて、植物?」
「そういう捉え方もおもしろいね、でも、私は、その祥子さんって人、華やかなわりには、ライオンみたいに襲いかかって勝ちに行くタイプとは逆で、人の話にそっと耳を傾ける、まるで風になびく麦の穂のような人じゃないかって」
七枝の言葉に、穂摘は、感銘を受ける。
「・・・本当に強いのは、そういうタイプの人ってこと?」
七枝は静かにうなずく。
「だから朝田先輩も彼女に惹かれたんじゃないかな。しかも、私たちや祥子さんだって、まだ、20代そこそこ、上には上がいる。そんな中で、うまくやっていけるのは、そういう風に身を任せられる柔軟な人なんじゃないかな、って」
七枝の言葉に、穂摘は素直にうなずく。
「・・・そういう人になりたいね」

タグ :カーテン

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